これからは自分の知能をAI化して売る世の中になる!
これは株式会社ネクスト(Lifull) Advent Calendar 2016の17日目の記事です。
こんにちは。ぼへみあです。 SFにありそうな大層なタイトルを付けましたが、割と現実的に起こりえそうという話をします。
より具体的には、ディープラーニングによる弱い人工知能の発達で、専門的な領域の判断能力をAI化し、知能を販売もしくはAPI提供するというビジネスが成立していくのではないかと思っています。
画像分野における機械学習の現状
ディープラーニングによるブレークスルーは、特に画像解析分野で大きな進歩をもたらしました。
特に一般物体認識と呼ばれる、写真になにが写っているか把握するタスクは、毎年コンペティションが行われており、精度がどんどん向上しています。
さらには、Google Cloud Vision API、Amazon Rekognition API、IBMのWatson Visual Recognitionなど、大手クラウド事業者がAPIの形で提供しているので、簡単に利用することができます。
しかしながら、こうした一般物体認識は、なかなか日本においてビジネス利用しづらいです。
原因として、①海外のデータセット利用して学習されているため日本の写真で使いづらい、②一般物体認識を利用するサービスは大規模になりがち、などが挙げられます。
①については、日本用の画像データセットを作れば解決するとは思います。しかし②については、現状で何が写っているか仮定をせずに画像を把握するというニーズは、家事用ロボットやコミュニケーションロボット、Amazonみたいな倉庫など、人に置き換えたらメリットが大きいがなかなか手を出しづらい分野になってくると思います。
一方で、一般物体認識ではない、特定の専門分野における画像識別がアカデミック、ビジネス、個人の趣味などで行われています。
アカデミックでは、
- 衛星写真からの土地分類判定
- 衣服種別判定
- スケッチ判定
- 不動産物件画像
などの研究例があります。
人工知能学会2016で発表があったものはまとめてあります。
ビジネスでは、
- リクルートのネイルの種類の分類や不適切な画像の判別
- リクルート、車の内装色の判定
- VASILYのファッションアイテムの検出・検索
- きゅうりの選果
などが実用化されているようです。
個人の趣味では、
- ラブライブのメンバーの顔を認識
- アイドルの顔を判別
- おそ松さんの顔を判別
などがあります。
データセットが足りない!
こうした特定の分野の画像を判別するためには、その分野に特化したデータセットが必要となってきます。
このデータセットというのは、最も一般的な教師あり学習のクラス分類の場合、
判別対象の画像データと、正解データのペアです。
例えば、おそ松さんを判別したい時は、画像1-カラ松、画像2-おそ松、というようなペアを大量に用意して学習させます。
このデータセット、教師データさえ作成してしまえば、画像だけで判別できるものの多くは判断することができるようになります。
作るのは大変な手間がかかりますが、作成してしまえば、個人の趣味の範囲で行えてしまうところまでやってきています。
現状の国内では、自由に使えるデータセットが少なく、研究や実用化のボトルネックになっています。 自由に使えるデータが少ないため、研究者はデータ集めに苦心している状況です。
専門家のAI化
ここで特定の専門家に協力してもらい、様々なパターンにおける判断をデータセットにすることができれば、その専門家の判断能力をAIにでき、売り買いできます。
概要はこんな感じです。
例えば、特定の病気の第一人者の人に、身体データとその病気かどうかの正解データを作ってもらえれば、その病気かどうかを判定するAIができます。実際にガンかどうかの判断をディープラーニングで判定する研究があるそうです。
ここでは専門家と書きましたが、そんなにたいそうなことでなくても大丈夫です。美味しい野菜や魚を見分ける方法でもいいですし、子供の間で流行っているキャラクターを判断するとか、魚や虫の種類を判別する、コインの種類を見分ける、ブランドバッグの偽物を見分けるなど、自分の趣味や生活上で身についた判断能力でも可能かと思います。
この未来には、専門家が作成したデータセットを元に、チューニングしながら機械学習させ、API化させる何らかの組織やサービスが必要です。
が、そのうち出てくるのではと思っています。
この組織は、データセットに対して対価を支払い、機械学習を施してモデルを作成、API化してクラウドで提供します。
そしてユーザーはAPIの使用に対して対価を支払い、専門家の判断能力を使うことができるというわけです。
この判断能力は、ユーザーが直接使える形でも良いですし、サービスに組み込んで複合的に利用することで 既存のWEBサービス等のクオリティが向上できるのではと思います。
ビジネスとして成立するか?
もちろん、ビジネスとして成立させるためには、AIが提供する判断能力にビジネス的価値が存在しないと使ってもらえません。
おそ松さんを見分けるAPIを作っても、ほとんどコールされないと思います。
いくつか、これはAPIにしたら売れるだろうな、と思うものがありますが、ここでは黙っておきます。
今は画像だけの話をしましたが、文字列や統計データなども含めてモデルを学習することも十分に考えられます。
専門的判断能力が売り買いされる世の中はこうなる!
まず、第一人者の手がけたAIが高い価値を持ち、利用・共有されるようになります。
その領域について本当に詳しい人ほど、優れた学習データを作成でき、精度の良いモデルができると考えられます。
とすると、その分野において第一人者が利益を得られる構造になりそうです。
いわゆる「好きなことで生きて行く」人がより収益を上げやすい世の中になると思います。
もちろん統合的な判断はまだ全然できないので、収益の一部としてAIで提供して対価を得る形になると思いますが。
今の世界は分業が進み、特定分野の高度な専門知識が求められる時代です。
専門家に聞けば簡単に分かる話でも、非専門家には分からないことがどんどん増えていくと考えられます。
こうした状況で、部分的にでも専門的判断能力を簡単に利用できる世の中になることは、大きなメリットになると思います。
最後に
現状持っている知識や現状の課題等を踏まえて、こんな時代がやってくると考えてみました。
逆に、こんなこと起こりえないよ! とかこういうシステムの方が成立するのでは、という意見は大募集です。