ものづくりへの強いこだわりを持つエンジニアが見たSHIROBAKO
この記事は、SHIROBAKO Advent Calendar 2015の4日目の記事です。
前日はたけちさんの、SHIROBAKOのイベントに参加して誓ったことでした。 僕がこのアドベントカレンダーを見つけて、彼に「これは書くしかありませんよね?」と無茶振りしたところ、ブログを開設して書いてくれたくらい熱狂的なSHIROBAKOファンです。SHIROBAKOのイベントにはいったことがないので、次は是非行ってみたいと思いました。
SHIROBAKOを見て、アニメーターとエンジニアの仕事の類似性を感じ、共感を覚えたエンジニアは多いと思う。 この記事では、当時の僕のエンジニアとして受けた影響について語りたいと思う。
プロダクトオーナーによる仕様変更
SHIROBAKOの2話では、スケジュールがギリギリの状況で、監督が表情芝居の出来に納得できず、絵を修正したいという話になった。キャラの設定を新たに思いつき、その設定に従って原画から全てを作り直すことになる。
山田さん:今になって新しいキャラ設定持ち出されても困るって話ですよ
宮森:つまり原画から全部新作ってことですか?
山田さん:そんなことしてたら、納品間に合いませんよ!
僕はiOSアプリのエンジニアをしていたのだが、近いやり取りを何度か経験した。 企画側からエクセルなどに書かれた仕様書が来るのだが、最初から完璧な仕様書なんてやってこない。作っていくうちに、やっぱりこうしたい、思ってたのと違うから直して欲しい、というやり取りが発生する。
アニメ2話の状況をアプリ開発に置き換えると、アプリの一画面が仕様通りに実装が終わりテスト中に、「これユーザが使いたい機能とずれてる」と気づき、チーム全員でユーザーに届けたかった価値を今一度修正・共有し、開発をやり直すという状況だと思う。
エンジニアにしわ寄せ
こうした仕様変更の影響をもっとも受けるのは、エンジニアである。
6話より、爆発のカットを作画でいくか3Dでいくか、太郎に振り回されて、宮森が下柳さんに謝りに行くシーン
下柳さん「またひっくり返さないでよ。振り回されるのはこっちなんだから。」
みゃーもり「すみません・・・」
まったくその通りである。
特に僕は当時、技術を理解してくれない企画・ディレクターに少し苛立ちを覚えていた。
「これっていつまでにできそうですか?」と聞かれた見積もりが締め切りになっていたり
「これはそんなに難しくないはず」という条件が違う過去案件からの推測に基づく無茶振りだったり
仕様が曖昧すぎて実装できない仕様書を渡されて、できるところからやってと言われたり。
そんな心理状況でさらに振り回されて、いい気分のはずがない。 なにせ、変更を決める側はとくに被害を受けるわけでもなく、しかもエンジニア的苦労を理解してくれないからだ。
それでも頑張った
それでも僕は、そういった要求を断ることもせず、むしろこうしたらいいんじゃないか、という提案をしまくった。 それは僕がまだ新卒だったので認められたい、という気持ちと、よいものを作りたいというものづくりへの強いこだわりがあったからだ。
僕はハッカーの3大美徳を強く信仰している。僕はアプリケーションの動作において、少しでも気に入らない点についてとても短気である。私は、プライドが高く、傲慢であろうとするがために作ったアプリを人が使うときにケチがつけられないようによりよいものを目指す。またこの考え方がユーザーにとってより価値のあるものを届けることができると信じている。だからこそ最高のものを作るために、工数の関係でできないとは言いたくない。 企画時にそんな仕様はなかった、なんて思ったとしても、よいものを作ろうというプライドがあればそんなことは吐けない。 そんな気持ちで頑張っていた。
そんなときに、SHIROBAKOと出会った。
好きなものへの妥協なきものづくり
強いものづくりへのこだわりを持っている人間からすると、2話を始めとする、よりよいものを作るために妥協せずに作ろうと決めるストーリーは琴線に触れた。アニメーターはエンジニアよりもよっぽど大変な労働環境で、「アニメが好き」という一点でみんな頑張ってる。そこにとても励まされた。もう、えくそだすの重すぎる作画のシーンを最後まで妥協せずに方法を探って完成させるところとか、強いこだわりを持って空回りして夢を潰されて捻くれてしまった平岡が少しつづ報われていくところや、アニメを最高の形で終わらせるために野亀先生とあつく議論を交わす監督とか、もう記事を書いているといろいろ思い出してうまくまとめられない。 こんなに「アニメが好き」という気持ちからくる「よいアニメを作りたい」というモチベーションからの行動力にすごい感動した。 まとめると
- よいものを作るこだわりを妥協せず貫き通した末に報われたストーリーに感動した
- 本当に好きなものを作るエネルギーってすごい
ってことだと思う。
トライアンドエラーの繰り返し
3話のミムジーとロロの会話を引用する
ミムジー「リテイクってやり直しでしょ? やり直しばっかり!」
ロロ「仕方ないよ、ミムジー。そりゃ一気に完璧なものが作れたらそれがベストだけど、中々そうはいかないんだよ」
ミムジー「おんなじカット、何べんも何べんもやり直してさ! 一発で決めろよ!」
ロロ「トライアンドエラーの繰り返しで、少しずつ完成させていくしかないんだよ。原始的に見えるけど、描かないと分からないことだってあるんだから」
ミムジー「変な仕事! 変な人たち!」
ハッとした。アプリ開発もまさしくこの通りである。ユーザーが直接操作するアプリでは、使いやすいユーザーインターフェイスを実現するためには、トライアンドエラーを重ねて、企画時には分からなかった、こっちのほうがいい、あっちのほうがいい、という検討を繰り返す。実際に作って動かしてみないと分からないことがとても多い。
監督「作品って、作ってくうちにキャラも成長していくよね? 」
そう!! 作っていくうちに、こうしたほうが使いやすい、便利、カッコイイということが多くある。
それから僕は、最初から完璧な仕様書を求めることはなくなった。 最初から完璧なものが頭の中にあることなんてない。その時はよいと思っていたアイデアが後から考えればダメだったなんてことはたくさんある。途中で変更するのは、よりよいものを生み出すのに必要なこと。幸運なことに、内製で作っているので、変更のアイデアがあればドンドン出すことができ、よりよいものにしていける。この環境をフルに生かし、アプリもどんどん成長させていこうと思った。 開発途中でも企画・デザイナーに画面を見せて、意図したものとイメージが一致しているかを確認する、おかしいと思ったらすぐ確認する、中間レビューを提案するなど、方向性を修正できるコミュニケーションを増やした。
最後に
こんな感じで、エンジニアとして深く影響を受けた。だけどなんか思ったようにうまく書けなかった気がする。 これからも公私共に、好きなもの、面白いもの、役に立つものを全力で作っていきたい。よいものづくりを!